ファンダメンタルズ分析にも落とし穴が

■ファンダメンタルズ分析にも落とし穴が

ファンダメンタルズ分析は、企業の財務情報や商品の競争力、経済動向などを分析して企業本来の実力を見極めて投資を行う投資手法です。この投資手法は、中・長期的な投資に向いており、かつ頻繁に売買をくり返す必要がないため、働きながらでも実践しやすい投資手法でもあります。

しかしながら、こうした投資手法にもいくつかの気をつけなければならない落とし穴が存在することも確かです。そこで、今回はファンダメンタルズ分析の落とし穴について分かりやすく説明します。

■需給によっては一時的に企業の経済的な価値と株価が大きくかい離する場合も

ファンダメンタルズ分析の1つ目の落とし穴は、一時的には企業の経済的な価値と株価が大きくかい離してしまう場合があるということです。

企業の株価に影響を与える要因は、ファンダメンタルズ分析で考慮される要因だけとは限りません。株価は投資家のムードといったものにも大きく左右されることが知られています。例えば、リーマンショック時において、必ずしもそのショックの影響が個々の企業の業績にどのような影響をもたらすのかが明らかではない段階から市場全体で株価が暴落したり、大震災が発生した場合に売られすぎる企業といったものが現れたりします。また、このような一大イベントでなくとも過去最高益を更新する企業の株価がピーク三か月前や半年前から30%下落してしまうというような現象も発生しています。

このように、投資家がなんらかの形で不安を抱いた場合には、株がファンダメンタルズ以上に売られすぎるということが生じます。もちろん、逆に投資家が楽観的になっている場合には買われすぎて、企業の経済的な価値以上の株価が継続するといったバブルが生じることもあります。このように、株価はファンダメンタルズ以外の需給に基づいて形成されるということに注意が必要となります。

もちろん、こうした一大イベントなどでも株が売られすぎた場合であっても、もし本当にその企業に高い経済的価値が存在していれば、次第に株価はその企業価値に近づいていくことになります。別の言い方をすれば、こうした売られすぎの時期を冷静に見極め、株を購入することによって、利益を得やすくなるともいえます。このように、株価は需給によって一時的には企業価値と大きくかい離することがあるので、一時的なイベントに惑わされず企業価値を分析していく冷静さがファンダメンタルズ分析には必要だともいえます。

■株を保有している間に状況が変わってしまう可能性も

ファンダメンタルズ分析の2つ目の落とし穴は、中・長期的に株を保有している間に、不祥事などの問題が発生して、本質的な価値が低下してしまうという可能性があるということです。例えば、粉飾決算や主要な商品の欠陥が発覚したり、異物混入事件が起こってしまったりといった問題で新聞をにぎわせる企業はしばしば現れてしまいます。こうした問題が明らかになると企業の価値は大きく低下してしまうことになります。しかしながら、こうした出来事は投資家が企業の外からいくら分析をしても分からないことなので、完全に避けることは難しいと言えます。また、有名企業でもしばしばそのような問題を起こしているので、よく知っている企業だから変なことはしていないだろうという甘い予測も禁物でしょう。

もちろん、逆に画期的な新商品の発売や特許の獲得などで急激にその企業の価値が上昇するという可能性や、その不祥事の影響は一時的なものに留まるため、絶好の買い時となる可能性もあります。そのため、必ずしも状況の変化は悪いことばかりではありません。しかしながら、不祥事が発生し、その影響が長く続くことで、分析した時と比較して企業本来の価値が低下してしまう可能性があることには注意が必要です。

■ファンダメンタルズ分析を難しいと感じてもまずはやってみることが重要

さて、ここまでファンダメンタルズ分析にもいくつかの落とし穴があることを説明してきましたが、実はファンダメンタルズ分析を行っている人たちはウォーレン・バフェットのような著名な投資家をはじめとして、機関投資家が大口の資金を運用するケースが多いといえます。なぜなら、機関投資家は直接企業にインタビューなどをして重要なファンダメンタル情報を手に入れる機会が多いため、個人の投資家と比較してファンダメンタルズ分析をより正確に行いやすいためです。

しかしながら、そうした大口の投資を行う機関投資家はテクニカル分析を行って運用することは難しいとも言われています。なぜなら、大口の取引を行っているがゆえに、自身の投資行動によって株の需給に大きな影響を与え、株価のトレンドが変わってしまう可能性があるからです。それゆえに、テクニカル分析は小口資金の個人投資家により利用されている投資手法だともいえます。

そのため、もし、どうしてもファンダメンタルズ分析で自分には向いていないだとか無理そうだということであれば、テクニカル分析というもう一つの投資の手法についても別のコラムで説明しているので、そちらの方もぜひとも参考にしてみてください。

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