兵法三十六計に学ぶトレード学

兵法三十六計とは、三十六通りの戦術が書かれた中国の兵法書だ。

成立時期は不明である。

兵法書で有名な「孫子」よりも広く普及している。

ビジネスから日常生活まで、ありとあらゆる場面で活用されているといっても過言ではない。

そこで、株式投資にも応用できないかと考えた。

三十六通りの戦術を身に付けたら勝てるようになるだろう。

三十六通り全て紹介していくが、局面に合わせて大きく六段階に分かれている。

【勝戦計】

こちらが戦いの主導権を握っている場合。

  • 瞞天過海(まんてんかかい)…見慣れさせて敵を油断させる

瞞天過海(まんてんかかい)は、機関投資家がつかっている戦術だ。

“見せ板”という言葉を聞いたことがないだろうか。

見せ板とは、大きな注文を出し入れする行為である。

株価操縦をしているから、当然証券取引法違反だ。

だが、現状そんなことはお構いなしになっている。

見せ板に引っかかってしまうと、株価が逆方向に動くため、大損してしまう可能性がある。

十分に気を付けなければならない手口だろう。

  • 囲魏救趙(いぎきゅうちょう)…敵を一箇所に集中させない

囲魏救趙(いぎきゅうちょう)を株式投資に例えるなら分散投資だ。

敵ではないが、資金を分散させることは重要である。

資金を一箇所に集中させて、株価が思惑と違った方向に動いたら大損しかねない。

  • 借刀殺人(しゃくとうさつじん)…第三者が敵を攻撃するように仕向ける

自分は手出しせず、他人にやらせるということ。

まるで仕手筋のようだ。

株価を釣り上げて他人に買わせる。

自分は得をし、他人は損する。

くれぐれも第三者にならぬよう、用心したい。

  • 以逸待労(いいつたいろう)…すぐには攻めず、敵の疲弊を誘う

強大な敵に対しては、防御が先決である。

敵が疲れきったところを狙ったほうがチャンスがあるからだ。

株式投資でいえば、徹底した損切りが防御といえる。

損切りによって資産が目減りするのを防ぐ。

それから大きな利益が出るチャンスを待つのである。

  • 趁火打劫(ちんかだごう)…敵の混乱に乗じる

内紛などで敵が混乱している隙を狙う。

株式投資で混乱を招く恐れがあるのは、風説の流布だ。

風説の流布とは、虚偽の情報を流すことである。

当然、証券取引法違反なのだが、蔓延しているのが現状だ。

確かな情報なのか見極め、風説の流布には十分注意して頂きたい。

  • 声東撃西(せいとうげきせい)…敵を翻弄する

東から攻めると見せかけ西から攻める、いわば陽動作戦である。

株式投資でいえば、買うと見せかけて売るだ。

資金力のある機関投資家がよく行う。

彼らのポジションは大きいから普通に売買していては捌ききれない。

そこで一度大きな買いを入れて、小口がついてきたところに一気に売り浴びせるのだ。

見た目で判断してつられないように注意したいものである。

【敵戦計】

こちらが優勢である場合。

  • 無中生有(むちゅうせいゆう)…偽装工作をみせる

偽装工作をあらわにすることで、敵を油断させる。

敵を騙す行為は、株式投資の掲示板でもみられる。

俗にいう”買い煽り”や”売り煽り”だ。

風説の流布が蔓延している掲示板を真に受けて売買してはいけない。

みんなが”買い”だと騒いでるときは、意外にも”売り”であることの方が多いからである。

  • 暗渡陳倉(あんとちんそう)…正面から攻撃するとみせかけ、左右から攻撃する

正面からジャブを打つと見せかけ、左右からフックを飛ばす。

相手は守る場所を間違えたわけだから、大ダメージだ。

株式投資で言えば”ダマシ上げ”である。

買うとみせかけ、売りを仕掛ける。

つられて買ってしまうと痛い目に。

敵をひきつけるテクニックにはくれぐれも用心である。

  • 隔岸観火(かくがんかんか)…内紛が発生し、敵が混乱に陥っているなら、攻めずに自滅を待つ

大口の買いと大口の売りが争っているときは下手に手を出さず、静観するのが良い。

どう転ぶかわからないからだ。

その後、優位に立った方についた方が得策である。

  • 笑裡蔵刀(しょうりぞうとう)…友好的に接し、油断を誘う

ツイッターで「今から○○銘柄を××株買うよ」などと見かけたら要注意だ。

「援軍が来たか」とつい思ってしまうが、嘘をついているかもしれない。

確かな情報なのか、よく考えて行動しよう。

  • 李代桃僵(りだいとうきょう)…部分を捨て、全体を守る

部分を捨てる。

これは株式投資において必須のスキルだ。

資産を守りたければ少々の損失には目をつむるのである。

そうでなければ、明日には退場してしまうだろう。

  • 順手牽羊(じゅんしゅけんよう)…小さな隙をつく

小さな利益でも”勝ちは勝ち”だ。

繰り返せば、塵も山となる。

1円をバカにしてはいけない。

大きな含み益だったのに、買値付近まで戻って来てしまうことが多々ある。

そんなときは、少しの利益でも決済してしまおう。

プラスで終われるか、マイナスで終わるのか、全然違ってくるからだ。

【攻戦計】

一筋縄ではいかない場合。

  • 打草驚蛇(だそうきょうだ)…偵察を出して、様子を窺う

株式投資には《打診買い》というテクニックがある。

《打診買い》とは最初に少しだけ買ってみることだ。

株価が上がるとは思うが、それがすぐなのかわからないときに使う。

軽くジャブを入れるような感覚だ。

もし、思惑と違った動きをしても被害は小さい。

相場が難しいときに有効な手段なので、ぜひとも活用して頂きたい。

  • 借屍還魂(しゃくしかんこん)…あらゆるものを利用する

大口はどんな手段を使ってでも利益を上げてくる。

まず莫大な資金力。

株価を自ら動かすほどのパワーがある。

次に顧客だ。

株価を吊り上げるための情報を流して買わせるのだ。

だから、助言は参考程度に聞き流したほうが身のためである。

  • 調虎離山(ちょうこりざん)…敵の不利な地形へ誘い出す

自分の有利な場所で戦った方がいいことは明白だ。

株式投資でも、自分にとって相性の良い銘柄があると思う。

そうした銘柄をたくさんみつけると成績が上がりそうだ。

  • 欲擒姑縦(よくきんこしょう)…敵を逃がして気を緩ませる

敵を追い込むと必死になって反撃してくるが、逃がしてやれば闘志を削ぐことができる。

株式投資にも反撃はある。

一方的に売り込まれると買い方が集まってくるのだ。

下げの極みに至ると、売り枯れて買いに転じてくるからである。

これを「リバウンド」という。

特に短期で大きく値下がりした銘柄には買いのチャンスがあるので、目を凝らしてみつけたいものだ。

  • 抛磚引玉(ほうせんいんぎょく)…囮を作って敵をおびき寄せる

板情報にエサがぶら下がっていることがある。

板が薄くていかにも”買い”なのでは思うときがあるはずだ。

しかし、よく考えてほしい。

薄い板というのは大口にとっては買いづらいのだ。

何故なら、自ら株価を吊り上げてしまうからである。

自分が買った後に誰もついて来なかったら、株価は上がらない。

エサに食いついて自分がエサにならないよう、ご用心頂きたい。

  • 擒賊擒王(きんぞくきんおう)…敵の主力を抑えて弱体化を狙う

日経平均株価を構成する銘柄は主力と言えそうだ。

「(7203)トヨタ自動車」や「(9984)ソフトバンクグループ」がその一例である。

トヨタやソフトバンクが弱いときは、相場も同様に弱いことが多い。

取引しなくとも、ウォッチしたいところだ。

【混戦計】

相手が手強い場合。

  • 釜底抽薪(ふていちゅうしん)…直接勝負せず、敵の戦力を消耗するように導く

直球勝負だけでは勝てないことが多々ある。

株式投資においては《順張り》が王道だが、ときには《逆張り》が有効だ。

《逆張り》は株価の動きに逆らった仕掛けである。

特に《暴落相場》ではチャンスが多いから活用したいものだ。

  • 混水摸魚(こんすいばくぎょ)…敵を混乱させ、隙を突く

相場にはどっちつかずの難しい局面がある。

売り買い拮抗の混沌状態だ。

こうした場面でむやみに取引しても良い結果は期待できない。

相手の動きを見てからこちらも動きたいものである。

  • 金蝉脱殻(きんせんだっかく)…主力が留まっているかのように見せかけて撤退する

大口の保有してる建て玉にはメインとサブがある。

メインは大きな玉で、何が何でも勝たなければならないポジション。

サブは小さな玉で、株価を吊り上げるために使ったポジション。

もしメインが撤退したようであれば、そこからの株価上昇は期待できない。

  • 関門捉賊(かんもんそくぞく)…包囲して撲滅する

逃げられなくなったポジション、《塩漬け》はなんとしても回避したい。

  • 遠交近攻(えんこうきんこう)…遠くの相手と同盟を組み、近くの敵を倒す

筋は手を組んで、個人投資家を滅ぼす。

  • 仮途伐虢(かとばっかく)…小国を利用する

筋は顧客を利用して売り逃げる。

【併戦計】

同盟国間で優位に立つ。

  • 偸梁換柱(ちゅうりょうかんちゅう)…ひそかに物事の本質を変えて、敵を騙す

買い建てとみせかけ、売り建てをする。

  • 指桑罵槐(しそうばかい)…敵を脅迫し、戦わずして屈服させる

「A銘柄は下がりますよ」などと言って、売らせたのちに買い集める。

  • 仮痴不癲(かちふてん)…愚か者のふりをして、機会を待つ

「投資は怖い、怖い」と言いつつも、チャンスをしっかり待つ。

  • 上屋抽梯(じょうおくちゅうてい)…敵を引きずり込んで、退路を断つ

冷やし玉によって、ポジションを手放さざるをえなくする。

  • 樹上開花(じゅじょうかいか)…弱小を強大にみせる

見せ板によって、あたかも強いかのように装う。

  • 反客為主(はんかくいしゅ)…敵に従属して、内側から乗っ取る

資金力がないかのように装い、買い集める。

【敗戦計】

自軍が劣勢な場合。

  • 美人計(びじんけい)…美女で敵を誘惑し、闘志を削ぐ

美女はどんな場面でも強力だ。

  • 空城計(くうじょうけい)…手薄なところをあえてみせる

薄い買い板をみせ、個人投資家が空売りを仕掛けたところを捕らえる。

  • 反間計(はんかんけい)…スパイを利用する

《打診買い》を入れて、様子を窺う。

  • 苦肉計(くにくけい)…自ら傷を負い、敵を騙す

大口が含み損であるかのように装う。

  • 連環計(れんかんけい)…複数の策略を用いる

複数のテクニカル分析を用いて攻略する。

  • 走為上(そういじょう)…劣勢なときは全力で撤退して損害を避ける

トレンドが転換したと思ったら、直ちに撤退せよ。

【終わりに】

古代中国の兵法書「兵法三十六計」はいかがだっただろうか。

中には株式投資のお役に立ったものも、いくつかあったかと思う。

戦略はどんな勝負事でも通用するのだ。

古の知恵を借りて未来を制す。

最新の戦略ばかりが戦略ではないことが、わかったような気がするのは私だけだろうか。

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