買いたい弱気、売りたい強気

■「買いたい弱気、売りたい強気」とは

「買いたい弱気、売りたい強気」とは投資の格言の一つで、投資家はある株を「買いだ」と思ってもより安く買い叩きたいので「でも、もう少し株価が下がってから買おう」と弱気になり、逆に保有している株を「もう売り時だ」と判断してもより大きな利益が欲しいため「いや、もう少し株価が上がってから売ろう」と強気になることを指します。

■なぜ「買いたい弱気、売りたい強気」に陥るのか

こうした格言が生まれる背景には、私たちが自分の都合のよいように物事を考えがちだということがあります。ある株を「買い」と判断したからにはその株にとってポジティブな要因を見つけたためのはずです。

そのため、「これからその銘柄の株価が下がる」と予測するのは明らかに矛盾した予測のはずです。また、逆に保有している銘柄を売ることを決断したのは、その銘柄のポジティブな要因が出尽くし、これからネガティブ問題が出てくるため株価が下がると判断したからに他なりません。それにもかかわらず、「まだ株価が上がるはずだ」と考えるのも矛盾しています。

このような矛盾があるにもかかわらず、そのことに気づかないふりをして「買いたい弱気、売りたい強気」という状態に陥るのは物事の都合の良い面しか見ていないためでしょう。

■認知心理学では「確証バイアス」と呼ばれる現象

これは認知心理学の分野で「確証バイアス」と呼ばれるどの人も陥りがちな判断のミスです。心理学者によれば、人は自分が本当だと思っていることを確かめるための証拠を探しますが、それと反対するような証拠を無視したり、探す努力を怠ったりする傾向があります。

そして、それゆえに「それゆえにもしかしたらもっと株価が下がるかもしれない」と考えた瞬間に、さっきまで自分が「これから株価が上がる」と判断した材料を他の投資家も獲得していて、これから株価がすぐに上昇していく、という可能性をついつい見逃しがちになってしまうのです。

当然こうした非合理的な判断をしてしまっていれば、たまには「買いたい弱気、売りたい強気」の通りの株価の推移を描くこともあるかもしれませんが、長期的に見れば負けが増えていくのは間違いありません。

■「買いたい弱気、売りたい強気」を避けるためにはどうすればよいか

では、こうした過ちを犯さないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。

幸い、心理学者たちはこうした確証バイアスを避けるための方法もしっかりと研究してくれています。その答えは実にシンプルで、「間違っている可能性を意識する」ということです。

確証バイアスは私たちがほぼ自動的に陥ってしまう判断の偏りなので完全にそれを防ぐことはできません。

しかし、自分の考えの正しさをチェックしようと考えるのではなく、間違っている可能性を意識して、再度自分の考えを検討するようにすることでその過ちの多くは防げることも分かっています。

そのため、この記事を読んでくれた投資家の皆さんは、株の売買を行う際には「あれ、今の自分の判断は間違ってるかもしれないな。一度冷静にチェックしてみよう」と一度立ち止まって考えてみるようにしましょう。

そうすれば、「買いたい弱気、売りたい強気」という矛盾に陥ることを防ぐことができるはずです。

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